ウォルマートマーケットプレイス(Walmart Marketplace)とは?販売開始方法・比較・手数料・成功のポイントを解説

アメリカ市場でEC事業を展開している、あるいはこれから参入を検討している日本企業にとって、販売チャネルの多様化は重要な戦略の一つです。

Amazonでの販売は多くの企業が既に取り組んでいますが、競争が激化する中、新たな販路を開拓する場として、ウォルマートマーケットプレイス(Walmart Marketplaceに注目が集まっています。

ウォルマートマーケットプレイスは、Amazonに次ぐアメリカ最大級のECプラットフォームの一つとして、近年急速に成長しています。競争が比較的緩やかで、新規販売者にとって参入しやすい環境が整っていることも、注目を集める理由の一つです。

そこで今回は、ウォルマートマーケットプレイスの基本情報から、販売開始の具体的な手順、Amazonなど他のプラットフォームとの比較、費用体系、そして成功するためのポイントまで、詳しく解説します。

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ウォルマートマーケットプレイスとは何か

ウォルマートマーケットプレイスは、アメリカ最大の小売企業であるウォルマート(Walmart)が運営するオンラインマーケットプレイスです。第三者の販売者が、ウォルマートの公式ウェブサイトを通じて商品を直接消費者に販売できるプラットフォームとして機能しています。

ウォルマートマーケットプレイスの概要

ウォルマートマーケットプレイスは、2009年に開始された比較的新しいプラットフォームですが、ウォルマートの強固なブランド力と広範な顧客基盤を背景に、急速に成長を続けています。現在、数万社の販売者が登録し、数千万点の商品が販売されており、Amazonに次ぐ規模のマーケットプレイスとして確立されています。

ウォルマートマーケットプレイスの最大の特徴は、ウォルマートの公式ウェブサイト「Walmart.com」上で、第三者の販売者の商品が、ウォルマート自社商品と同様に表示される点です。

ウォルマートは、全米に4,700以上の店舗を展開し、週に2億人以上の顧客が来店する巨大な小売チェーンです。この顧客基盤の一部がオンラインショッピングにもアクセスしており、ウォルマートマーケットプレイスを通じて、これらの顧客に商品を届けることができます。

ウォルマートマーケットプレイスの特徴と強み

競争環境の緩やかさ

Amazonと比較して、ウォルマートマーケットプレイスは出品者数が少なく、競争が激しくない環境です。Amazonでは、多くの商品カテゴリーで数万から数十万の出品者が存在し、価格競争が激化しています。

一方、ウォルマートマーケットプレイスでは、同じカテゴリーでも出品者数が限られているため、新規参入者でも比較的目立ちやすく、競争優位性を築きやすい環境にあります。

シンプルな費用体系

ウォルマートマーケットプレイスは、初期費用や月額費用がかからないシンプルな料金体系を採用しています。

販売が成立した場合のみ、商品カテゴリーに応じた手数料を支払う仕組みとなっており、売上がない場合の固定費負担がありません。この点は、AmazonのProfessionalプラン(月額39.99ドル)と比較して、参入障壁が低いと言えます。

ウォルマートブランドの信頼性

ウォルマートは、アメリカで最も信頼されている小売ブランドの一つです。

顧客は、ウォルマートの公式サイトで購入する商品に対して、高い信頼感を持っています。これは、新規の販売者や知名度の低いブランドにとって、特に価値のある要素です。

オムニチャネル戦略との連携

ウォルマートは、オンラインとオフラインを統合したオムニチャネル戦略を推進しています。顧客は、オンラインで注文した商品を最寄りのウォルマート店舗で受け取ることができ、配送料を節約できます。

また、店舗での受け取りオプションは、顧客満足度の向上とリピート購入につながります。

ウォルマートマーケットプレイスで販売を開始する方法

ウォルマートマーケットプレイスで販売を開始するには、いくつかのステップを踏むことが求められます。

販売者登録の申請要件

法人格と税務情報

ウォルマートマーケットプレイスでは、個人事業主ではなく、法人としての登録が求められます。

アメリカで事業を展開する場合、米国法人の納税者番号(EIN: Employer Identification Number)の取得が欠かせません。税務情報として、W-9フォーム(米国法人の場合)またはW-8フォーム(外国法人の場合)の提出が必要です。

事業所の住所証明

事業所の住所証明が求められます。事業許可証、賃貸契約書、公共料金の請求書などが証明書類として認められます。

日本企業の場合、現地の事業所を有していることが望ましいですが、必ずしも必須ではありません。

商品カテゴリーとカタログサイズ

申請時には、主要な商品カテゴリーや、販売予定の商品数(カタログサイズ)を申告が必要です。ウォルマートマーケットプレイスでは、特定のカテゴリーに特化した販売者を歓迎しており、少なくとも数百点以上の商品を販売する計画があることが望ましいです。

既存のEC販売実績

既存のEC販売実績があることが審査の重要な要素となります。AmazonやeBay、自社ECサイトなどでの販売実績がある場合、その情報を申請時に提出することで、審査がスムーズに進む可能性が高くなります。

特に、Amazonでの販売実績があることは、大きなプラス要因です。

登録申請から販売開始までのプロセス

販売者登録の申請が承認されると、以下のステップを経て、正式に販売を開始できるようになります。

  1. アカウント作成と契約への同意:ウォルマート小売業者契約(Retailer Agreement)に同意する
  2. 会社情報の登録:会社名、住所、連絡先情報、ブランド情報などを登録する
  3. 税務情報の提出:W-9またはW-8フォームをアップロードする
  4. 支払い情報の設:アメリカの銀行口座を設定し、販売代金の受け取り方法を登録する
  5. 配送情報の設定:独自配送またはWalmart Fulfillment Services(WFS)を選択する
  6. 商品登録とテスト注文:商品情報を入力し、テスト注文でシステムの動作を確認する
  7. 商品の公開と販売開始:テスト注文で問題がなければ、商品を公開し、正式に販売を開始する

商品登録とカタログ管理

商品情報は、検索結果での表示順位や、顧客の購入決定に直接影響を与えます。タイトルには主要なキーワードを含め、商品説明は仕様、使用方法、注意事項などを分かりやすく記載しましょう。画像は高解像度で、複数の角度からの写真を掲載します。

在庫管理は、リアルタイムでの在庫更新システムを構築し、ウォルマートマーケットプレイスと連携することで、在庫の正確性を保つことができます。また、競争力のある価格設定が重要ですが、価格競争に巻き込まれすぎず、商品の独自性や付加価値を強調することが非常に重要であると言えます。

Amazonなど他のECプラットフォームとの比較

ウォルマートマーケットプレイスとAmazonの比較

市場規模と顧客基盤

Amazonは、世界最大のECプラットフォームとして、月間2億人以上のアクティブユーザーがいます。一方、ウォルマートマーケットプレイスは、Amazonほど大きな市場規模ではありませんが、ウォルマートの既存顧客基盤を活用できるという強みがあります。

競争環境

Amazonは、非常に競争が激しい環境です。多くの商品カテゴリーで、数万から数十万の出品者が存在し、価格競争が激化しています。

ウォルマートマーケットプレイスは、Amazonと比較して競争が緩やかで、出品者数が少ないため、新規参入の場合でも比較的短期間で検索結果の上位に表示される可能性が高くなります。

費用体系

Amazonの費用体系は、Professionalプランの月額費用(39.99ドル)、販売手数料(カテゴリーにより6%〜45%)、FBA手数料、ストレージ費用、広告費用など、複雑になっています。

一方、ウォルマートマーケットプレイスは、初期費用や月額費用がなく、販売が成立した場合のみ、商品カテゴリーに応じた手数料(通常8%〜15%)を支払うシンプルな料金体系です。

配送サービス

Amazonは、FBA(Fulfillment by Amazon)という包括的な配送サービスを提供しています。

ウォルマートマーケットプレイスでは、Walmart Fulfillment Services(WFS)が提供されており、FBAと同様のサービスを提供していますが、利用可能地域や機能は限定的な場合があります。

審査と登録の難易度

Amazonは、比較的簡単に登録できますが、ウォルマートマーケットプレイスは、審査が厳しく、既存のEC販売実績、法人格、税務情報など、複数の要件を満たすことが求められます。ただし、審査に通れば、競争が緩やかな環境で販売できるというメリットがあります。

その他の主要ECプラットフォームとの比較

eBay: オークション形式と固定価格形式の両方で販売可能。中古品やコレクターズアイテムに強い。費用体系は、出品手数料と販売手数料(通常10%〜12%)の組み合わせ。

Etsy:ハンドメイド商品、ヴィンテージ商品、工芸用品に特化。費用体系は、出品手数料(0.20ドル/商品)と販売手数料(6.5%)の組み合わせ。

Shopify:自社ECサイトを構築・運営するためのプラットフォーム。月額プラン(29ドル〜299ドル/月)と取引手数料の組み合わせ。マーケットプレイスのような既存の顧客基盤はないため、自社でマーケティングや集客を行うことが求められます。

プラットフォーム選びの判断基準

商品の特性、ターゲット顧客層、リソースとコストを考慮し、適切なプラットフォームを選択することが重要です。

多くの成功している販売者は、複数のプラットフォームで販売する「マルチチャネル戦略」を採用しており、リスクを分散し、より多くの顧客にリーチできるようになります。

出品手数料・費用体系

手数料の種類と計算方法

ウォルマートマーケットプレイスでは、主に「販売手数料(Referral Fee)」が発生します。販売手数料は、以下の計算式で求められます:

  • 販売手数料 = 商品販売価格 × 手数料率

例えば、商品の販売価格が100ドルで、手数料率が15%の場合、販売手数料は15ドルとなります。販売者は、100ドルから15ドルを差し引いた85ドルを受け取ります。

販売手数料は、商品の販売価格に対して課金されるため、配送料や税金は手数料の計算対象外です。商品が返品された場合や、注文がキャンセルされた場合、既に支払った販売手数料は返金されます。

カテゴリー別の手数料率

ウォルマートマーケットプレイスの販売手数料は、商品カテゴリーによって異なります。

手数料率15%のカテゴリー

多くのカテゴリーで、手数料率は15%に設定されています。主なカテゴリーは以下の通りです:

  • アパレル・アクセサリー:衣類、靴、バッグ、時計など
  • 美容・パーソナルケア:化粧品、スキンケア、ヘアケア製品など
  • ホーム・ガーデン:家具、インテリア、園芸用品など
  • スポーツ・アウトドア:スポーツ用品、アウトドアグッズなど
  • おもちゃ・ゲーム:玩具、ゲーム、ホビー用品など

手数料率8%のカテゴリー

一部のカテゴリーでは、手数料率が8%と低く設定されています。主なカテゴリーは以下の通りです:

  • 電子機器:スマートフォン、タブレット、パソコンなど
  • 家電:冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど
  • 自動車・バイク用品:カーアクセサリー、バイクパーツなど

食品、書籍、音楽・映像ソフトなど、特定のカテゴリーでは、異なる手数料率が適用される場合があります。正確な手数料率は、ウォルマートマーケットプレイスの公式サイトや、販売者ポータルで確認することをお勧めします。

その他の費用とコスト構造

Walmart Fulfillment Services(WFS)の費用

WFSを利用する場合、以下のような費用が発生します:

ピック&パック手数料:商品のピッキングとパッキングにかかる費用(商品のサイズと重量により異なる)

ストレージ費用:ウォルマートの倉庫での在庫保管費用(1立方フィートあたりの月額費用)

配送費用:顧客への配送費用(配送先と商品のサイズ・重量により異なる)

広告費用

ウォルマートマーケットプレイスでは、商品の露出を増やすための広告サービス(Sponsored Products)が提供されています。広告費用は、クリック単価(CPC: Cost Per Click)で課金され、予算は販売者が設定します。

その他のコスト

その他のコストとして、商品写真・画像制作費用、商品説明文の作成費用、在庫管理システムの費用、カスタマーサービス対応の費用、返品処理の費用などが考えられます。

ウォルマートマーケットプレイスでの販売における総コストは、以下のように計算できます:

  • 総コスト = 商品原価 + 販売手数料 + WFS費用(利用する場合)+ 広告費用 + その他のコスト

収益性を確保するためには、これらのコストを正確に把握し、適切な価格を設定しましょう。

ウォルマートマーケットプレイスで成功するためのポイント

競争力のある価格設定

ウォルマートマーケットプレイスの顧客は、価格を重視する傾向が強いため、競争力のある価格設定が成功の鍵となります。価格設定を行う前に、市場調査と競合分析を徹底的に行い、Amazon、eBay、その他のECプラットフォームでの価格も調査します。

ただし、単に競合の価格を下回れば良いというわけではなく、商品の価値と利益率のバランスを考慮することが重要です。

市場の状況は常に変化するため、定期的に価格を見直し、必要に応じて調整することが重要です。また、単一商品の価格競争に巻き込まれるのではなく、バンドル商品(複数の商品をセットにしたもの)やプロモーションを活用することで、差別化を図ることができます。

高品質な商品情報と画像

商品情報と画像は、顧客の購入決定に直接影響を与えるため、最適化が極めて重要となります。

商品タイトルは、主要キーワードを含め、商品の特徴を明確に記載します。キーワードの詰め込みすぎは避け、読みやすさも考慮しましょう。商品説明は、商品の仕様、使用方法、注意事項、付属品、保証情報などを含め、顧客の疑問を解消し、購入後の満足度を高めます。

商品画像は、高解像度で、複数の角度からの写真、使用シーンの写真、パッケージの写真、サイズ比較写真などを提供します。プロフェッショナルな写真を撮影するか、外部の写真家やスタジオを利用することで、高品質な画像を確保すると良いでしょう。

迅速な配送と在庫管理

Walmart Fulfillment Services(WFS)を活用することで、ウォルマートの配送ネットワークを利用でき、通常2日以内の配送が可能となります。迅速な配送により、顧客満足度が向上し、レビューやリピート購入につながります。

在庫管理は、リアルタイムでの在庫更新システムを構築し、ウォルマートマーケットプレイスと連携することで、在庫の正確性を保つことができます。複数のチャネルで販売している場合、在庫を一元管理し、過剰販売を防ぎます。また、季節やイベントに応じた需要の変動を予測し、在庫を調整するようにしましょう。

顧客のニーズに応じて、複数の配送オプション(標準配送、速達配送、店舗受け取りなど)を提供することで、顧客満足度を向上させることができます。

顧客対応とレビュー管理

顧客からの問い合わせには、迅速かつ丁寧に対応することが重要です。ウォルマートマーケットプレイスでは、24時間以内の返信が推奨されており、迅速な対応が顧客満足度とアカウント評価に影響します。よくある質問(FAQ)を商品ページに記載することで、問い合わせの数を減らすことができます。

レビューは、商品の信頼性と販売に大きな影響を与えます。購入後、適切なタイミングでレビューの依頼を行い(ただし、インセンティブを提供することは禁止されています)、ネガティブなレビューには丁寧に対応し、問題を解決する姿勢を示します。また、レビューの内容を分析し、商品改善や顧客対応の改善に活かしましょう。

明確な返品ポリシーを設定し、顧客に分かりやすく提示することも大切です。返品可能期間、返品条件、返品手続き、返送費用の負担者などの情報を含めることが推奨されています。

マーケティングとプロモーション戦略

ウォルマートマーケットプレイスでの検索結果の上位表示を目指すため、SEO対策を行います。商品タイトル、説明、タグに適切なキーワードを含め、商品を適切なカテゴリーに分類し、商品の属性(色、サイズ、材質など)を正確に入力します。

Sponsored Productsなどの広告サービスを活用することで、検索結果の上位表示や、関連商品の表示が可能となり、販売機会が拡大します。広告を効果的に活用するためには、キーワードの選定、収益性を考慮した予算設定、パフォーマンスの監視と最適化が重要となります。

ソーシャルメディアInstagramFacebookTikTokなどを活用して、商品の認知度を高め、ウォルマートマーケットプレイスへのトラフィックを誘導します。また、季節やイベント(ホリデーシーズン、バレンタイン、母の日など)に応じたプロモーションを実施することで、販売機会を拡大できます。

まとめ

ウォルマートマーケットプレイスは、Amazonに次ぐアメリカ最大級のECプラットフォームとして、急速に成長を続けています。競争が比較的緩やかで、新規販売者にとって参入しやすい環境が整っていることから、多くの日本企業が注目しています。

ウォルマートマーケットプレイスで成功するためには、競争力のある価格設定、高品質な商品情報と画像、迅速な配送と在庫管理、優れた顧客対応、効果的なマーケティングが重要です。適切な戦略と努力により、販売者にとって大きなビジネスチャンスを提供するプラットフォームです。

特に、Amazonでの競争が激化している中、新たな販路を開拓する選択肢として、ウォルマートマーケットプレイスは有力な選択肢となります。プラットフォームの特性を理解し、顧客のニーズに応じた商品とサービスを提供することが欠かせません。

市場調査、競合分析、顧客フィードバックの分析を継続的に行い、戦略を改善していくことが、長期的な成功につながります。

アメリカ市場での販路拡大を検討している日本企業にとって、ウォルマートマーケットプレイスは、リスクを抑えながら新たな販売機会を獲得できる魅力的なプラットフォームです。本記事で解説したポイントを参考に、ウォルマートマーケットプレイスでの販売を検討していただければ幸いです。

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