アメリカでの資金調達完全ガイド:日本企業が知っておくべき融資制度と申請のポイント

アメリカ市場への進出を検討している日本企業にとって、資金調達は重要な課題の一つです。アメリカの融資制度は日本とは大きく異なり、多様な選択肢と独自の申請プロセスがあります。

本記事では、アメリカでの資金調達について、基本制度から具体的な申請方法、日本企業が注意すべき点まで詳しく解説します。

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アメリカの融資制度の基本と日本との違い

アメリカ融資制度の特徴

アメリカの融資制度は、日本と比較してより多様性に富んでおり、起業家や中小企業を支援する仕組みが発達しています。最大の特徴は、政府機関、州政府、民間金融機関、そして新興のフィンテック企業まで、様々なプレイヤーが資金提供を行っている点です。

日本では、主にメガバンクや地方銀行が融資の中心となっていますが、アメリカではSBA(Small Business Administration:中小企業庁)のような政府機関が積極的に中小企業を支援し、民間金融機関との連携を図っています。

また、各州が独自の支援プログラムを展開しており、地域特性に応じた資金調達オプションが豊富に用意されています。

日本との主な違い

1. クレジットスコアの重要性

アメリカでは、個人のクレジットスコア(信用スコア)が融資審査において極めて重要な役割を果たします。

日本では企業の財務状況や事業計画が主な審査基準となりますが、アメリカでは経営者個人の信用履歴が企業の信用度を判断する重要な指標となります。

一般的に、クレジットスコアが700以上であれば良好とされ、融資の審査が通りやすくなります。

2. 担保の考え方

日本の融資では、不動産などの有形資産を担保とするケースが一般的ですが、アメリカでは無担保融資も比較的容易に利用できます。

特にSBA融資では、政府保証により担保要件が緩和される場合があります。また、売掛債権や在庫を担保とする資産担保融資(Asset-Based Lending)も一般的です。

3. 審査プロセスの速度

アメリカでは、特にフィンテック企業を活用した場合、融資審査が非常に迅速に行われます。オンライン申請から数時間で審査結果が出るケースも珍しくありません。

一方、日本では審査に数週間から数ヶ月かかることもあり、スピード感に大きな違いがあります。

4. 資金調達の多様性

従来の銀行融資に加えて、エンジェル投資家(Angel Investor)、ベンチャーキャピタル(Venture Capital)、クラウドファンディング(Crowdfunding)、そしてフィンテック企業による融資など、多様な資金調達手段がアメリカでは利用可能となります。

日本でも近年は資金調達手段の多様化が進んでいますが、アメリカの方が選択肢は豊富だと言えるでしょう。

5. 情報開示の透明性

アメリカでは、企業の財務情報や信用情報がより透明性の高い形で共有されており、金融機関が迅速に判断できる環境が整っています。

一方、日本では情報の非対称性が大きく、審査に時間がかかる傾向にあります。

主な資金調達の種類

SBA(Small Business Administration)融資

SBAは、アメリカ連邦政府の中小企業支援機関で、中小企業への融資を保証することで、民間金融機関からの資金調達を促進しています。SBA自体が直接融資を行うのではなく、民間金融機関が融資を行い、SBAがその一部を保証する仕組みです。

SBA 7(a)ローン

最も一般的なSBA融資プログラムで、最大500万ドルまでの融資が可能です。用途は多岐にわたり、運転資金、設備投資、不動産購入など、様々な事業目的に使用できます。

金利は市場金利に基づき、返済期間は最長25年(不動産の場合)となっています。

SBA 504ローン

主に不動産や大型設備の購入を目的とした融資プログラムです。

通常、物件価格の50%を銀行が融資し、40%をSBAが保証する認証開発会社(CDC:Certified Development Company:SBAが認定する非営利の地域開発機関)が融資し、残り10%を借主が自己資金として用意します。固定金利で、最長20年の返済期間が設定されています。

SBA Expressローン

迅速な審査を特徴とするプログラムで、最大50万ドルまでの融資が可能です。審査期間が短く、36時間以内に回答が得られる場合があります。

ただし、SBA保証率は50%と、7(a)ローンの75-85%より低くなっています。

SBA Microloanプログラム

小規模事業者向けの少額融資プログラムで、最大5万ドルまでの融資が可能です。

非営利団体を通じて提供され、起業家や新規事業者にとってアクセスしやすい選択肢となっています。

SBA融資のメリット

  • 政府保証により、通常の銀行融資より審査が通りやすい
  • 金利が比較的低く設定されている
  • 返済期間が長く、月々の返済負担が軽減される
  • 担保要件が緩和される場合がある

SBA融資のデメリット

  • 申請プロセスが複雑で時間がかかる
  • 詳細な事業計画書や財務諸表の提出が求められる
  • 個人保証が通常必要
  • 審査基準が厳格

各州の支援プログラム

アメリカの各州は、地域経済の活性化を目的として、独自の中小企業支援プログラムを展開しています。州政府融資プログラム、税制優遇制度、助成金など、州によって大きく異なります。

州内での事業活動が前提となる場合が多く、進出予定の州のプログラムを詳細に調査し、複数のプログラムを組み合わせて活用することが効果的です。

商業銀行融資

商業銀行は、アメリカにおける伝統的な資金調達手段です。メジャーバンクからコミュニティバンクまで、様々な規模の銀行が中小企業向け融資を提供しています。

メジャーバンクとコミュニティバンク

JPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)、バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)などの大手銀行は大規模な融資を提供しますが、小規模事業者にはアクセスが難しい場合があります。

一方、地域密着型のコミュニティバンクは、より柔軟な審査基準を採用し、地域経済への貢献を評価する傾向があります。日本企業がアメリカに進出する際は、進出地域のコミュニティバンクとの関係構築が不可欠です。

商業銀行融資の種類

  • 短期融資(Short-term Loans):運転資金や季節的な資金需要に対応。通常1年以内の返済期間。
  • 中期融資(Intermediate-term Loans):設備投資などに使用。1-5年の返済期間。
  • 長期融資(Long-term Loans):不動産購入などに使用。5年以上の返済期間。
  • 信用状(Lines of Credit):必要に応じて資金を引き出せる枠組み。運転資金の管理に適している。

商業銀行融資の審査基準

  • 企業の財務状況(売上、利益、キャッシュフロー)
  • 経営者のクレジットスコア
  • 事業の実績と将来性
  • 担保の有無
  • 業界の特性とリスク

フィンテック企業による融資

近年、テクノロジーを活用したフィンテック企業が、中小企業向け融資市場に参入しています。これらの企業は、従来の銀行と比較して、より迅速で柔軟な融資サービスを提供しています。

フィンテック企業とは

フィンテック(FinTech)は「Financial Technology」の略で、金融サービスとテクノロジーを融合させた企業やサービスを指します。フィンテック企業は、AI、ビッグデータ分析、クラウドコンピューティングなどの最新技術を活用し、従来の金融機関では提供が難しかった迅速で柔軟な融資サービスを実現しています。

フィンテック企業の特徴

AIや機械学習を活用した自動審査により、従来の銀行では数週間かかっていた審査を数時間から数日で完了させます。財務諸表だけでなく、売上トレンドやキャッシュフローパターンなど多様なデータを分析し、柔軟な返済条件を提供します。申請から資金提供までオンラインで完結するため、迅速で手続きが簡単です。

中小企業にとっての重要性

従来の銀行融資では、審査基準が厳格で新規事業者にはアクセスが難しく、審査に時間がかかるという課題がありました。

フィンテック企業は、クレジットヒストリーが短い新規事業者、緊急の運転資金が必要な企業、小額の融資を必要とする企業などにとって重要な資金調達手段となっています。

メリット

  • 申請から審査、資金提供まで迅速
  • オンライン完結で手続きが簡単
  • 小額融資にも対応
  • 柔軟な返済条件

デメリット

  • 金利が銀行融資より高い場合がある
  • 融資額に上限がある場合が多い
  • データ連携が必要で、プライバシーの懸念がある場合がある

代表的なフィンテック企業

  • Kabbage:売上に基づく融資。最大25万ドルまで。申請から数分で審査結果が得られる場合がある。
  • OnDeck:中小企業向け短期融資。最大50万ドルまで。最短1営業日で資金提供が可能。
  • Fundbox:売掛債権を活用した融資。小額から対応。
  • BlueVine:信用状と短期融資。最大25万ドルまで。
  • LendingClub:P2Pレンディング(Peer-to-Peer Lending)プラットフォーム。最大50万ドルまで。

投資家からの資金調達

エクイティファイナンス(Equity Finance:株式による資金調達)も、アメリカでは一般的な資金調達手段です。

エンジェル投資家は初期段階の事業に小額(数万ドルから数十万ドル)を投資し、経営アドバイスやネットワークも提供します。

ベンチャーキャピタルは成長段階の企業に大規模な投資(数百万ドルから数千万ドル)を行い、高い成長ポテンシャルと明確な出口戦略が必要です。

クラウドファンディング(KickstarterIndiegogoなど)は、リワード型やエクイティ型で不特定多数から資金を調達する方法です。返済義務はありませんが、経営権の一部を譲渡する必要があります。

融資申請の準備

クレジットヒストリーの構築

アメリカで融資を申請する際、経営者個人のクレジットスコアが極めて重要です。

日本企業の経営者がアメリカで事業を始める場合、アメリカでのクレジットヒストリーが存在しないため、事前に構築しなければなりません。

クレジットスコアの重要性

クレジットスコアは、300から850のスケールで評価され、以下のように分類されます:

  • 800-850:Excellent(優秀)
  • 740-799:Very Good(非常に良好)
  • 670-739:Good(良好)
  • 580-669:Fair(普通)
  • 300-579:Poor(低い)

融資審査では、通常700以上が望ましいとされています。

クレジットヒストリー構築の方法

  1. 個人クレジットカードの取得:最初はセキュアドカード(Secured Card:保証金を預けて発行されるカード)から始めるのが一般的です。
  2. 企業クレジットカードの利用:事業経費を支払うことで、企業の信用履歴も構築できます。
  3. 小額融資の利用:フィンテック企業などから小額の融資を受け、定期的に返済することで信用履歴を構築できます。
  4. 公共料金の支払い:電気、ガス、インターネットなどの公共料金を個人名義で契約し、定期的に支払うことで信用履歴として記録されます。
  5. レポートの定期的な確認EquifaxExperianTransUnionの三大信用調査機関から定期的にクレジットレポートを取得し、誤りがある場合は訂正を申請します。

クレジットヒストリー構築のタイムライン

クレジットヒストリーの構築には時間がかかります。最低でも6ヶ月から1年は必要で、良好なスコアを獲得するには2-3年かかる場合があります。

したがって、アメリカ進出を検討している段階から、クレジットヒストリーの構築を開始することが求められます。

提出が求められるビジネスプラン内容

融資申請において、詳細なビジネスプランは必須です。アメリカの金融機関は、事業の実現可能性と成長ポテンシャルを評価するため、包括的なビジネスプランを求めます。

ビジネスプランに含めるべき要素

  1. エグゼクティブサマリー:事業の概要、市場機会、財務ハイライト、資金調達の目的と金額を1-2ページで要約
  2. 会社概要・市場分析:会社の歴史、法人形態、経営陣の経歴、ターゲット市場の規模と成長率、競合分析、市場参入戦略
  3. 製品・サービス・マーケティング戦略:製品・サービスの詳細、独自の価値提案、顧客獲得戦略、価格戦略、販売チャネル
  4. 運営計画:事業運営の詳細、サプライチェーン管理、品質管理、人材計画
  5. 財務計画:損益計算書(過去3年分と今後3-5年の予測)、貸借対照表、キャッシュフロー計算書、損益分岐点分析、資金使途、返済計画
  6. リスク分析と付属資料:事業リスクの特定と軽減策、経営陣の履歴書、財務諸表、市場調査データ、法的文書

ビジネスプラン作成のポイント

  • 具体的な数値目標と根拠を示し、過度に楽観的な予測は避ける
  • 会計士やビジネスコンサルタントにレビューを依頼する
  • 事業環境の変化に応じて定期的に更新する

必要書類

融資申請には、様々な書類の提出が求められます。準備が不十分だと審査が遅延したり、却下されたりする可能性があるため、事前にしっかりと準備することが欠かせません。

必要書類の種類

  • 個人関連:身分証明書、SSN(Social Security Number:社会保障番号)またはITIN(Individual Taxpayer Identification Number:個人納税者識別番号)、個人の納税申告書(過去2-3年分)、銀行口座明細書(過去3-6ヶ月分)、クレジットレポート(Credit Report:信用情報レポート)
  • 企業関連:法人登記証明書、EIN(Employer Identification Number:雇用者識別番号)、営業許可証、企業の納税申告書(過去2-3年分)、銀行口座明細書(過去6-12ヶ月分)、財務諸表(過去2-3年分)、年次報告書
  • 事業関連:ビジネスプラン、顧客・サプライヤー契約書、リース契約書、保険証書、知的財産権証明書、資金使途の詳細説明、担保の評価書、推薦状、市場調査データ

書類準備のポイント

  • 日本語の書類は公認翻訳者による英語翻訳が必要な場合がある
  • 一部の書類は公証人の認証が必要
  • 財務諸表や銀行口座明細書は申請時点から3ヶ月以内のものが望ましい
  • 書類を整理し、索引を付けることで審査がスムーズになる
  • 多くの金融機関がオンライン申請を受け付けているため、PDF形式で準備することが必須

日本企業が注意すべき点

文化的・制度的な違いへの対応

日本企業がアメリカで資金調達を行う際は、日本とは異なる文化的・制度的な環境に対応する必要があります。

1. 情報開示の積極性:アメリカの金融機関は詳細な情報開示を求めます。財務状況、事業計画、経営陣の背景など、透明性の高い情報提供が信頼構築につながります。

2. ネゴシエーションの姿勢:融資条件について積極的に交渉することが一般的です。金利、返済期間、担保要件など、様々な条件について交渉の余地があります。

3. スピード感への対応:特にフィンテック企業は迅速な意思決定を重視します。申請書類の提出が遅れたり、追加情報の提供に時間がかかったりすると、審査が不利になる可能性があります。

4. リスク許容度の違い:アメリカの金融機関はリスクを許容する傾向がありますが、その分リスクに見合った金利や条件が設定されます。リスクとリターンのバランスを理解し、適切な資金調達手段を選択することが求められます。

法的・税務上の考慮事項

1.  法人形態の選択:LLC(Limited Liability Company:有限責任会社)、Corporation(C-Corp:一般法人、S-Corp:小規模法人)など、各形態には税務上の取り扱いや資金調達への影響が異なるため、専門家のアドバイスを受けることが不可欠です。

2. 税務上の取り扱い:アメリカと日本には租税条約が締結されており、二重課税を回避する仕組みがあります。資金調達の方法によって税務上の取り扱いが異なるため、税理士や税務弁護士に相談することが推奨されます。

3. 為替リスク:ドル建て融資の場合、円高になった際の返済負担が増加する可能性があります。為替リスク管理の戦略を事前に検討する必要があります。

4. コンプライアンス:資金調達に関連する規制(SEC規制(Securities and Exchange Commission:米国証券取引委員会の規制)、州証券法など)を遵守する必要があります。特に投資家からの資金調達を行う場合は、証券法の適用を受ける可能性があるため、現地の弁護士に相談するようにしましょう。

言語とコミュニケーション

融資申請から審査、契約まで、すべて英語で行われるため、英語でのコミュニケーション能力が重要となります。

ビジネスプランや財務諸表も英語で作成する必要があり、金融、会計、法務などの専門用語を正確に理解することが求められます。必要に応じて、翻訳者や専門家のサポートを受けることを検討してください。

ネットワーク構築の重要性

1. 地元の専門家との関係構築:会計士、税理士、弁護士、ビジネスコンサルタントなど、地元の専門家との関係構築が成功の鍵となります。適切な金融機関の紹介や、申請書類のレビュー、交渉のサポートなどを提供してくれます。

2. 業界団体と日系企業コミュニティへの参加:業界団体や商工会議所、日系企業コミュニティに参加することで、ネットワークを構築し、資金調達の機会や情報、同じような経験をした企業からのアドバイスを得ることができます。

段階的なアプローチ

1. 小額からの開始:最初から大規模な融資を申請するのではなく、小額の融資から始めて信用履歴を構築することをお勧めします。フィンテック企業からの小額融資や、コミュニティバンクとの関係構築から始めることが効果的です。

2. 複数の選択肢の検討:一つの金融機関に依存せず、SBA融資、州プログラム、商業銀行、フィンテック企業など、様々なオプションを比較検討することで、最適な条件を見つけることができます。

3. 長期的な視点:資金調達は一度きりの取引ではなく、長期的な関係構築の機会です。良好な関係を構築することで、将来的な追加融資や、より良い条件での資金調達が可能になります。

まとめ

アメリカでの資金調達は、日本とは大きく異なる制度とプロセスがあります。SBA融資、州プログラム、商業銀行、フィンテック企業、投資家など、多様な選択肢が存在し、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。

成功するためには、事前の準備が極めて重要です。クレジットヒストリーの構築、詳細なビジネスプランの作成、必要書類の準備など、時間をかけて準備することが審査通過の鍵となります。

日本企業がアメリカで資金調達を行う際は、文化的・制度的な違いを理解し、適切に対応してください。情報開示の積極性、ネゴシエーションの姿勢、スピード感への対応など、アメリカのビジネス文化に適応することが求められます。

また、法的・税務上の考慮事項、言語とコミュニケーション、ネットワーク構築など、様々な側面から準備を進め、専門家のサポートを受けながら、段階的なアプローチで資金調達を進めることが成功への道筋となります。

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