アメリカの経費精算の基本ルールと手続き

アメリカの経費精算の基本ルールと手続き

アメリカに進出する日本企業にとって、アメリカの適切な経費精算のルールを理解することは、税務コンプライアンスの観点から重要です。特に、IRS(米国国税庁)が定める経費の定義や原則を把握し、適正な経費管理を行うことが求められます。

事業に関連する支出のうち、IRSが「通常かつ必要(Ordinary and Necessary)」と認めるものは経費として計上できます。しかし、税務上の取り扱いは経費の種類によって異なり、特定の条件を満たす必要があります。

この記事では、アメリカの経費精算の基本ルールと手続きについて詳しく解説していきます。

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アメリカの経費精算の基本ルール

IRSが定める経費ルール

IRSが定める定義では、通常の経済活動において一般的であり、業務の遂行に必要なものであれば、経費として認められます。具体例としては、オフィス賃料、従業員給与、広告費、出張費、業務用の備品・ソフトウェア費などが含まれます。一方で、個人的な支出や業務に直接関係しない支出は経費として認められません。

認められる経費と認められない経費

IRSのルールに基づく範囲内で、企業は経費精算の社内ポリシーを明確にし、適正な精算を行うことが重要です。

一般的に以下の経費が認められます。

  • 交通費(飛行機代、タクシー代、レンタカー費用)
  • 接待交際費(取引先とのビジネスディナー)
  • 通信費(業務用の携帯電話代やインターネット料金)
  • 宿泊費(業務関連の出張で発生した費用)
  • 研修費(業務に関連するセミナーや資格取得費)

一方、以下のような経費は認められないことが多いです。

  • 業務に関係のない個人的な支出(個人の食事、衣服、娯楽費)
  • 過度な贅沢品の購入(高額な接待費用や不必要な備品)
  • 規定外の交際費(会社ポリシーで許可されていない飲食)

経費精算を適正に行うためには、企業内で明確なルールを定め管理することが不可欠です。

経費精算の主な方法

企業用クレジットカード vs 個人立替

企業は、従業員の経費精算を効率化するために企業用クレジットカード(Corporate Card)を発行することが一般的です。この方法のメリットは、企業が直接カード会社へ支払いを行うため、従業員の立替負担を減らし、経費管理を一元化できる点です。クレジットカードの利用履歴が自動的に記録されるため、利用者以外が確認や支払いを行うことによって経費の不正使用を防止することができます。

一方で、企業用カードを発行しない場合、従業員は業務に関する支出を個人で立て替えた後、精算する必要があります。個人立替のメリットは、企業がカード発行の手続きや管理の手間を省けることですが、デメリットとしては、従業員の負担が増えることや、精算手続きに時間がかかることが挙げられます。

レシートの保管義務

経費精算を行う際には、証拠書類としてレシートや領収書の保管が義務付けられています。IRSの規定では、$75未満の経費については領収書が不要とされる場合もありますが、例外事項や監査リスクを考慮し、企業によってはすべての経費についてレシート提出を義務付けることがあります。

レシートの保管方法には、紙の原本を保管する方法と、デジタルデータとして保存する方法があります。近年では、ExpensifyやSAP Concurといった経費管理ツールを活用し、レシートをスキャンしてデジタル保存する企業が増えています。デジタル化により、レシートの紛失防止や精算処理の迅速化が可能になります。

経費の種類と税務上の取り扱い

会計には管理目的の数字と税務目的の数字があり、前者は経営管理が目的です。一方、税務は税法に従う必要があり、経費計上の基準や処理も異なります。

交通費

業務目的で発生したフライト代、ガソリン代、レンタカー代は、全額を経費として計上できます。ただし、通勤費(自宅からオフィスへの移動)は経費として認められません。一方で、顧客訪問や出張での移動は業務上の経費として認められます。マイカーを使用した場合、実際のガソリン代のほかにIRSが定めるマイレージレート(2024年時点では1マイルあたり67セント)に基づいて経費計上が可能です。

宿泊費

出張時のホテル費用は経費として認められますが、Airbnbなどの民泊サービスを利用する場合、契約内容や領収書の形式に注意が必要です。企業ポリシーによっては、ホテルのみを許可する場合もあります。しかし、Airbnbのビジネスプログラムを利用するなどして、出張経費を管理することもできます。

食事代

取引先との会食や接待費用は経費として計上できますが、IRSでは50%のみ控除対象となるルールがあります(例外あり)。一方で、個人の食事や通常のランチ代は原則として経費として認められません。ただし、出張時の食事は例外的に50%の控除が認められる場合があります。

事務用品や備品購入

プリンターやパソコン、文房具などの事務用品の購入費用は全額経費として計上可能です。たとえば、コンピューターの場合、初年度に取得費用を経費として計上したり、5年間に分けて取得費用の減価償却を行うケースがあります。

適正な経費管理を行い、IRSのルールに沿った経費処理をすることが、税務コンプライアンスの観点から重要です。

経費精算におけるレシート管理のポイント

アメリカでも、経費精算における領収書管理は特に重要です。以下のポイントを抑え正しく管理し、必要な記録を保管しましょう。

  • $75以上の経費には領収書が必須
  • 領収書をスキャンして保存することで事務作業を軽減
  • クレジットカードの明細だけでは不十分なことも

IRSの規定では、$75以上の経費については領収書(receipt)の提出が必須とされています(一部例外あり)。ただし、企業によっては監査リスクを考慮し、すべての経費に対して領収書の提出を求めるケースも多いため、社内ポリシーに従うことが重要です。

紙の領収書の代わりに領収書をスキャンしてデジタルデータとして保管することで、領収書の紛失リスクを軽減したり、事務作業を軽減することができます。

クレジットカードの利用明細書(statement)だけでは経費の証拠として不十分とみなされることがあるため、購入した商品の詳細が記載された領収書を保管する必要があります。特に監査時には、支出の正当性を証明できる記録が求められるため、金額・日付・支払い先・購入内容が明確な領収書を保持することが大切です。

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まとめ

この記事では、アメリカの経費精算の基本ルールと手続きについてご紹介しました。アメリカの経費精算には、日本と異なるルールや慣習があります。適切な経費精算のルールを作成し、IRSのガイドラインに従った経費管理を行うことで、税務リスクを最小限に抑えつつ、スムーズな精算業務を実現できます。

たとえば企業用クレジットカードや経費精算システムを活用することで、手続きの簡素化とコンプライアンスの強化が可能です。日々の経費管理を適切に行い、効率的な業務運営を目指していきましょう。

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※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務に関する詳細な判断や対応については専門家の助言を受けることをおすすめします。具体的な税務処理や申告に関しては、税理士などの専門家もしくは弊社までご相談ください。

 

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