2025年1月、TikTokを運営する中国のByteDance社がアプリの運用を一時停止しました。これは、ByteDance社がアメリカ事業を売却しなければ、アメリカ国内でアプリを実質的に禁止する法律が19日に発効されたことによるものです。しかし、その翌日、大統領令で中国資本からの切り離しまで75日間の猶予期間が与えられました。
猶予期間が与えられたもののこの先どうなるかは不透明な状況ですが、この一連の出来事は、アメリカ国内のSNS市場とユーザー心理に大きな影響を与えました。この記事では、アメリカのクリエイターやユーザーの反応、今後のアメリカのSNS利用動向について解説します。
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TikTokクリエイターたちの反応
TikTokでオーディエンスを築き、収入を得ていたクリエイターたちは、TikTok禁止の可能性に対して多様な対応を見せています。
代替プラットフォームへの移行
中国では「小紅書」として知られる中国のSNSアプリ「RedNote」には、自称「TikTok難民 (“TikTok Refugee”)」が殺到し、2025年1月中旬に1日で米国内のユーザー数が300万人近く増加したといわれています。
参照:ロイター
移行先として他にも注目されている中国系アプリは、TikTokと同様のインターフェースやアルゴリズムを提供している、若者向けのLemon8です。その他には、安定した収益化モデルが魅力のYouTube Shortsや、Meta社が提供するInstagram Reelsなども注目されています。
クロスプラットフォーム戦略
上記で述べたTikTok以外の複数のプラットフォームを組み合わせて、それぞれでフォロワーを増やし、特定のプラットフォームに依存しないファンベースの構築を目指すクリエイターもいます。このアプローチは、長期的な安定性を求めるクリエイターにとって重要な戦略となっています。
また、直接的な収益化手段としてライブ配信を活用するクリエイターも増加しています。様々なプラットフォームでの配信を通じ、特定のプラットフォームに依存しないファンベースを構築できるほか、ファンとのリアルタイム交流を通じて、投げ銭や商品の販売などで新たな収入源を確保しています。
TikTokの独自性とユーザー心理
1億7000万人の米国人が利用するともいわれるTikTok。TikTokが、他のSNSと一線を画す理由として、以下の3つが挙げられます。
アルゴリズムの優位性
TikTokの「For You」ページは、高度なAIを駆使し、ユーザーの興味に特化したコンテンツを瞬時に提供します。この没入感により、ユーザーが次々に動画を視聴し続け、他のSNSでは得られない特別な体験を生み出してきました。
クリエイティブな自由度
TikTokでは、ショート動画のフォーマットにより、クリエイターが手軽にコンテンツを制作・発信できます。この低い参入障壁が、プロだけでなく一般ユーザーにも受け入れられる理由であり、多様でユニークなコンテンツが生まれる要因となってきました。
コミュニティ文化
「チャレンジ」や「ミーム文化」を通じた活発なユーザー間交流が、TikTokの魅力をさらに高めてきました。特に若年層には、この一体感や連帯感が支持され、他のプラットフォームでは得られない共感を生み出してきたのです。
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TikTok禁止法の影響とMetaに対する批判
TikTok禁止が議論される中、Meta(InstagramやFacebookの親会社)への批判も増えています。特に、ユーザーやクリエイターの間で以下の問題が指摘されています。
プライバシーへの懸念
Metaは過去に複数のプライバシー問題を引き起こしており、一部のユーザーはInstagramやFacebookの利用を避ける傾向があります。このため、TikTokの代替としてMetaのプラットフォームに移行することに抵抗を感じるユーザーも少なくありません。
アルゴリズムの透明性への不満
Metaのプラットフォームでは、アルゴリズムがクリエイターのコンテンツ露出を制限する場合があるため、多くのクリエイターが不満を抱えています。一方、TikTokは、独自の「For You」アルゴリズムによって、クリエイターがより幅広いオーディエンスにリーチできる点で支持を集めています。
これらの問題により、MetaがTikTokユーザーの受け皿となるには課題が残されており、他の代替プラットフォームへの関心が高まっています。
新たなプラットフォームの潮流
TikTok禁止の議論を背景に、クリエイターのための新たなプラットフォームが形成されています。
クリエイターエコノミー系プラットフォームの成長
クリエイターたちは、広告収益に依存せず、サブスクリプションモデルやファンからの直接支援を収益源とする動きを強めています。たとえば、Patreonでは、ファンクラブのような形でファンからの月額のメンバーシップ料を得たり、個々のビデオやポッドキャストエピソードなどを販売するオンラインショップから収益を得ることができます。
また、Substackでは有料ニュースレターで専門性の高い情報を提供することで収益化が可能です。この仕組みは、クリエイターが独自のブランドを育て、ファンとの関係を深める手段として注目されています。
分散型SNSの台頭
プライバシー侵害やアルゴリズムの透明性への懸念が高まる中、MastodonやBlueSkyのような分散型SNSも注目を集めています。これらのプラットフォームは中央集権的な管理者がいないため、自由にサーバーを選び、広告なしでコミュニケーションを楽しむことができます。また、クリエイター自身がサーバーを運営することもでき、プラットフォームのアルゴリズム変更や規約変更に影響されず、独立性を確保できます。
国際的な競争の激化
アメリカや中国発のアプリだけではなく、フランス系のアプリ「BeReal.」なども若年層に人気があります。「BeReal.」は、1日1回ランダムな時間にアプリから通知が届くと、2分以内に写真や動画を撮影し、フィルターや加工のないリアルな姿を友達やファンと共有する仕組みです。ファンコミュニティの育成やクローズドコミュニティを構築することができ、持続的な顧客との繋がりを築くことができます。
オンラインアシスタント/Emily.
オンラインアシスタント/Emily.では、アメリカ在住の日米バイリンガルがアシスタントとして所属しており、アメリカでビジネスを運用する日本企業のサポートを行なっております。
SNS運用やコンテンツ作成、マーケティングやプロモーション、広告運用、インフルエンサー管理など、TikTokやInstagramといったSNSを活用する業務をサポートすることが可能です。
TikTokはアメリカで特にGen Z(1990年代後半〜2010年代前半生まれ)の消費者層に大きな影響力を持つSNSです。そのため、Gen Zに特化した効果的なマーケティングを行いたい場合、日本企業にとってもアメリカ市場攻略の重要なツール[…]
まとめ
この記事では、TikTok禁止法とアメリカの今後のSNS利用動向について解説しました。TikTok禁止法案は、アメリカ国内のSNS市場に多大な影響を与え、今後のさらなる多様化を促す可能性を秘めています。
アメリカ市場に進出する日本企業は、ターゲット層に応じたプラットフォーム選びやコンテンツ戦略を柔軟に調整する必要があります。クリエイター達と同様に、広範でフレキシブルなSNS戦略を採用することが今後の鍵となるでしょう。
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