アメリカにおける給与計算業務の基本ポイント

アメリカにおける給与計算業務の基本ポイント

アメリカでビジネスを行う際、小規模な企業であっても従業員が一名以上いる場合には、法的に賃金の支払いが必要となります。

同時に、源泉徴収の控除、関連する税金、社会保険税、医療保険税などを支払う義務も発生します。

この記事では、Payrollと呼ばれるアメリカにおける給与計算業務の基本ポイントをご紹介しています。

オンラインアシスタント/Emilyではアメリカ事業に欠かせない業務を幅広くサポートしています。
サービス資料のダウンロードはこちら

給与システムの選択(Payroll Service)

モールビジネスを含め、多くのアメリカ企業が給与計算自動化ソフトウェアを導入したり、アウトソーシングしたりすることで給与業務を行っています。事業の始動時にどんな給与計算環境を採用するかで、その後の運営の円滑さを大きく左右すると言えるでしょう。

例えば、社員が入社する際、給与計算ソフトウェア上に給与支払い開始のためのプロセス効率化が提供されていることが多く、給与部門はソフトウェア上のチェックリストに沿って業務を進めることができます。

入社する社員側からしても、リストに従うことにより入社時のペイパーワーク等を効率的に完了できます。

手続きが円滑で、必要な情報、ツールが適宜提供されるかにより、入社時の印象は大きく変わります。結果として、入社直後の離職の防止、定着率アップに繋げることができるでしょう。

予算や必要となる機能、使いやすさを考慮し、ビジネスに適した給与計算サービス、ベンダーを選択することはオペレーション上のパートナーを見つけることと同等の意味を持つと言えるでしょう。

関連記事

給与体系や人事・労務管理システムの整備は事業の基盤づくりにおいて欠かせない要素であり、給与計算システムの決定・導入は非常に重要なステップのひとつであると言えます。この記事では、アメリカのペイロール(給与計算・支払い)ソフトウェアとし[…]

社員入社時の給与部門のタスク(Payroll Onboarding Process)

事業主は、新規従業員の入社時に以下のフォームへの入力、署名を要請し、回収する責任があります。

Form W-4(Employee’s Withholding Certificate)

上記は、IRS(内国歳入庁)発行のフォームです。

2020年に大幅な改訂があり「Tax Withholding Estimator」という源泉徴収見積りツールを使用し、徴収額を調整する様式になったため、新規従業員に「W-4」への入力を依頼し、記入された内容をもって源泉徴収する額が決まるようになりました。

個人情報、ファイリング・ステータス(独身者として申告するのか、夫婦別々、もしくは合算で申告するのか等)(Step 1)から始まり、複数の仕事を持つ場合や配偶者と合算で申告する場合は(Step 2)の入力、扶養家族(Step 3)やその他の調整額(Step 4)を申告し署名(Step 5)を行います。

State W-4 Form

州税として所得税を課税している州は、州独自の源泉徴収フォームの提出が必要となる場合があります(一律課税制を採用している場合等の例外あり)。

ここで注意が必要なのが、W-4に相当するフォームが必ずしもW-4と呼ばれているわけではありません。

(例:オレゴン州 Form OR-W-4、カリフォルニア州 Form DE 4、ニューヨーク州 Form IT-2104)

Form I-9(Employment Eligibility Verification)

給与計算との直接の関係はありませんが、雇用された個人の身元と就労許可の有無を証明するためのUSCIS(米国移民局)のフォームです。

米国市民か否かにかかわらず、書類の提出が必須です。

給与所得控除(Payroll Deductions)

給与所得控除とは従業員の総支給額(Gross Pay)より天引きされる額を指します。総支給額より控除を差し引いた額が実際に支払われる額(Net Pay、Take-home Pay)です。

以下は主な控除項目になります。

連邦所得税
Federal Income Tax
連邦政府(IRS)に対して納付。
州所得税
State Income Tax
州政府に対して納付。
43州が州税として所得税を徴収している。
地方自治体税
Local Tax
群、市町村等の地方自治体が徴収している税。
社会保険税
Social Security Tax
連邦政府(IRS)に対して納付。
連邦保障税法に基づいており、FICA Taxと呼ばれる。
雇用主、従業員の双方が同額を負担する。
メディケア税
Medicare Tax
従業員拠出
Employee Contribution
401(k)などの年金積立。
その他福利厚生
Benefits
健康保険、デンタル、ビジョン保険等。

上記の他、事業者が従業員のために負担する税金や拠出額があります(例:失業保険税、雇用者拠出等)。

給与担当者は従業員の給与から源泉徴収した所得税を1年に4回、Form 941というフォームを使用して、IRSに対して報告、支払いを行います。

給与の銀行振込(Direct Deposit)

従業員より必要事項を入手し、金融機関や給与計算自動化サービス・プロバイダーを通し銀行振込セットアップを行います。

従業員は金融機関名、アカウントタイプ、アカウントナンバー、ルーティングナンバーを雇用主に渡します。

チェックブックを使用することが珍しくなった現在でも、入力ミスを避ける手段として、無効のチェック(Voided Check)の提出を求めている企業もあるようです。州によって従業員の銀行振込に関して独自の要件が規定されている場合があります。

勤務時間のタイムシート(Time Tracking)

公正労働基準法(Fair Labor Standard Acts)は雇用形態をExempt(免除)とNon-Exempt(非免除)という2種に分けています。

残業代支払いの義務が免除されているのがExempt、支払いの義務が免除されていないのがNon-Exemptです。

雇用主はNon-Exemptの従業員の実働時間を正しく記録し、その記録に基づいて賃金を支払う義務があり、法規制に則って残業代を支払う必要があります。

記録された実働時間を給与システムに自動移行できることができれば正確性が高められ、業務の効率化につなげられます。

オンラインアシスタント/Emily.の勧め

オンラインアシスタント/Emily.には、日米のビジネス慣習に精通したプロフェッショナル・アシスタントが在籍しており、日本企業の米国事業支援を行なっています。

海外展開したばかりで、フルタイムの採用業務にかける時間がなかったり、現地リクルーティングのノウハウにご不安がある経営者の方、ご担当者の方にご相談いただき、フルリモートでバックオフィスサポートを行なっています。

関連記事

日本からアメリカに赴任する駐在社員の場合、帯同ご家族のリロケーションや、アメリカの文化や慣習、言語問題、州による独自のルールなど分からないことが多く、サポートやアドバイスを必要とするケースがよくあります。社員が新しい赴任地でもスムー[…]

アメリカ駐在員の赴任サポートを成功させるためのポイント

まとめ

アメリカにおける給与の基本ポイントについてご紹介しました。

法的な枠組みの中で従業員に正確に給与を支払い、的確に控除を処理することは従業員を守ることだけにとどまらず、事業を守ることを意味します。

ビジネスに適した給与業務の環境を採り入れることで、コア業務とのバランスを保つことができます。

バックオフィス部門の業務負荷を改善されたい場合はオンラインアシスタントへ業務委託が可能です。オンラインアシスタント/Emily.はアメリカ進出する際のパートナーとして日本企業のサポートを行なっていますので、お気軽にお問い合わせください。

※アメリカの税法と規制は複雑で変化しやすいものです。したがって、このブログに含まれる情報は一般的なガイダンスであり、具体的なケースに関しては会計専門家にご相談下さい。

関連記事

アメリカでの事業の立ち上げは、海外展開を望む企業にとって新たな成長の機会を切り開く大きなステップと言えます。ですが、海外事業の立ち上げは未知の税制度や各州独自の規制・難題に直面することも多く、経営者や担当者にとって悩みどころといえる[…]

アメリカ法人税
オンラインアシスタント/Emilyではアメリカ事業に欠かせない業務を幅広くサポートしています。
アメリカ事業の立ち上げやリソース課題などでお困りの方はお気軽にご相談ください。
サービス資料のダウンロードはこちら

米国オンラインアシスタント

>Our Solution

Our Solution

「Assist」というアプローチから実現する新時代のソリューション。様々な業務を抱えてしまうと、本来対応すべきコア業務に 集中できず、事業成⻑が鈍化しかねません。Emily Assistantは大事な業務に集中して頂ける環境づくりをご提供します。

CTR IMG