アメリカでオンラインショッピングを運営する場合、消費者の動向を観察し、消費者が求めているベネフィットを提供することで、商品の販売率を上げることができます。
この記事では、アメリカの配送ソフトウェア会社「Shippo」が調査した、アメリカのEコマースで消費者が期待する配送方法やオプションなどをご紹介しています。
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引用元データ
引用しているデータは配送ソフトウェア会社Shippoが発表した、2023年アメリカの配送関連についての年次レポートです。
レポートによるとカスタマーは他の特典や割引よりも送料無料を重視している一方で、Eコマース事業者は配送コストに懸念を抱いていることが分かりました。
こちらの調査結果は、アパレル、食品、宝飾品、電子機器を扱う1,191のEコマース事業者を対象とし、2023年11月と12月に1,000人の買い物客から得た回答に基づいたデータとなります。
引用データ:2023 State of Shipping
アメリカのオンラインショッピングについて
インフレ問題や景気の後退などのさまざまな懸念がビジネスの成長率に影響を与えるなか、2023年になってもアメリカのEコマース市場の勢いは留まることがありません。
Shippoが調査したデータによると消費者の60%(前年41% )は買い物をする際、少なくとも半分のアイテムはオンラインショッピングで購入すると回答しました。 これは消費者の消費習慣が変化してきていることを表しており、今後も変化し続ける可能性が十分にあると言えます。
Eコマースビジネスを長期的に継続したい場合、オンラインショッピングを行うアメリカの消費者の興味を維持するためにブランドへのロイヤルティを保ち続けることが大切です。
とはいえ、インフレにおいて、企業やブランドはより慎重で柔軟な戦略を立てる必要があると言えます。
不況化に耐えられるEコマースビジネスを運用する際に鍵となるのが、商品の購入前から購入後、さらにはそれ以降もカスタマーとコミュニケーションをとり、フルフィルメント全体を通して可能な限り業務効率の向上とコストの最適化に重点を置くことです。
それと同時に、競争が厳しくなるアメリカのEコマース市場で成功したいのであれば、消費者の期待とニーズを最大限に考慮しましょう。
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実店舗 vs オンラインショッピング
こちらはアメリカの消費者が、実店舗とオンラインショッピングでどのように買い物をするかという事を示した表です。
2021年 | 2022年 | |
ほぼ全てオンラインショッピング | 16% | 28% |
半分以上がオンラインショッピング | 25% | 31% |
半分以下がオンラインショッピング | 35% | 22% |
実店舗とオンラインショッピング同じくらい | 24% | 19% |
2021年と2022年の1年間で大きく変化しており、2021年に比べて2022年ではさらにオンラインショッピングを好む消費者が増加しました。
またショッピング方法に選択肢がある場合、60%がオンラインショッピングを好み、40%が実店舗での購入を希望しました。
アメリカの送料に関して
配送コストはEコマース事業者にとっての最大の課題となっています。下記表はアメリカのEコマース事業者が抱える課題です。
2022年 | 2023年 | |
送料 | 41% | 36% |
サプライチェーンの遅延 | 12% | 8% |
消費減少 | 11% | 20% |
顧客獲得 | 9% | 13% |
インフレにより自由に使えるお金の減少などで消費者行動が変化がしたり、新型コロナウイルスの影響からサプライチェーンと運送業者の遅延の問題がさらに深刻化しました。
在庫を確保することが多くの商品を販売する鍵となることは間違いなく、在庫切れのリスクを最小限に抑えるために、販売者は人気の高い商品を事前にオーダーするように心がけて在庫を予測し、購入または再購入を検討しているカスタマーがいつでも商品を購入できる状態にしておくことが重要となります。
一方、販売者によるアメリカの配送業者に対する信頼感は安定してきており、信頼がないと答えた販売者の数は減少しているようです。それは2022年にサプライチェーンの混乱が緩和され、配送遅延が及ぼす消費者体験が改善されたためだと考えられます。
また、よりアメリカの消費者に寄り添った返品体験を通じフルフィルメントのサービス内容を差別化し、より厳しい市場で競争力を獲得することを検討することも大事です。
アメリカの消費者が2023年に支出を削減しようとしたのと同様に、販売業者も自社のビジネスコストを削減する方法を模索していました。
配送に関しては、販売業者がコストの節約を目指し配送料を最適化することが大きな課題でした。
Shippoの調査では、販売者の3/1が注文総額の6~10%を配送料に費やし、他の3/1の販売者は11~20%を費やしていると回答しました。平均して販売者の34%は注文総額の11~20%を配送料として費やしています。
- 販売者の32%が6~10%を支出
- 販売者の21%は1~5%の範囲で支出
- 販売者の3%が20%を超える支出
Eコマース事業者がフルフィルメントコストを節約する方法は、複数の配送業者の導入を検討することです。
下記の図は「提携している配送業者は何社ですか?」という調査の結果です。
- 68%:2〜4社
- 30%:1社
- 2%:5社以上
複数の配送業者を導入することは、コスト、サービスレベル、信頼性に関する期待やニーズを満たし最適化することに役立ちます。
Eコマース事業者が目を向けるべきなのは、利益率を損なうことなくロイヤルティとリピート購入を促進することが可能な魅力的でコスト効率の高いフルフィルメント戦略の実装です。
チェックアウト時に配送の選択肢や配送オプションを提供し、迅速な配送、消費者に配送業者の決定を委ねることで、より多くの購入を促進し、継続的な顧客ロイヤルティを獲得することができます。
また送料が無料または低価格であるということも、アメリカの消費者にとって非常に重要な判断基準となります。
送料無料に関して妥協しないと答えた消費者は増加しており、62%の消費者が送料無料でないと購入しないと回答しました。それに引き替え、送料を気にしない消費者はわずか3%でした。
配送のスピード
オンラインショッピングで配送期間を商品購入時に考慮するか、また送料が低コストであることの重要性について販売業者とアメリカの消費者の意見はほぼ一致しており、フルフィルメントに関して消費者の期待をアメリカのEコマース事業者はよく理解していると言えます。
下記表は「オンラインで商品を購入する場合、どのくらいの配送速度を希望しますか?」という調査の結果です。
2021年 | 2022年 | |
2〜3 日 | 48% | 52% |
4〜7 日 | 34% | 38% |
当日もしくは翌日 | 18% | 10% |
より早い配送を希望する消費者は2021年では18%だったのに対し、2022年には当日または翌日配達を希望する消費者はわずか10%となりました。また全体的にも2021年より2022年の方が商品到着までの日数に寛大になった消費者が増えました。
下記表は「一般的に選択される配送サービスのオプションは何ですか?」という調査の結果です。
2〜3 日の配送 | 44% |
4〜7日の配送 | 24% |
オプションなし | 27% |
当日もしくは翌日 | 5% |
消費者の1/3はどの配送業者が配達するかについて個人的な好みを持っていますが、販売者の74%はチェックアウト時に配送業者の選択肢を提供していません。
送料以外にも配送業者を多様に組み合わせることにより、チェックアウト時により多くの配送オプションを提供できるようになります。
また一部のユーザーは荷物を特定の曜日や日程に受け取りたい場合があり、希望する日にちに商品が配達されると消費者の購入後の体験が確実に向上し、リピート購入する傾向が高まります。
配送に関する情報
Eコマースのフルフィルメントの過程を事前にカスタマーに伝えることで、カスタマーからの信頼とロイヤルティが高まります。
またカスタマーは自身で注文した商品のステータス確認や配送状況の確認が行えるので、カスタマーサポートに割く時間もカットできます。
「消費者がWebサイトで確認する、最も重要な情報は何ですか?」という調査では下記のような結果となりました。
- 送料
- 平均配送時間
- 商品の発送時期
- 配達予定日
結果としEコマース事業者の73% が事前に送料に関する情報を消費者へ提供していましたが、商品ページまたはチェックアウト時に平均配送時間、配達予定日、商品の発送日をカスタマーへお知らせしている販売業者は全体の半数未満でした。
「製品ページやチェックアウトページにはどのような情報を記載していますか?」という調査では下記の結果となりました。
- 73%:送料
- 49%:平均配送時間
- 33%:配達予定日
- 33%:商品の発送時期
この調査からEコマース事業者は、商品ページまたはチェックアウトページに出荷予定と配達の詳細を事前に記載し、購入に対する信頼度を高め、収益の増加とリピーターへと繋がるよう取り組みましょう。
また消費者は商品を購入した後、配達に至るまでの物流について通知を受け取りたいとも考えています。
「注文に関してどのようなタイミングで連絡を受けたいですか?」という調査では、下記のような結果となりました。
- 68%:購入品の発送時に連絡してほしい
- 66%:注文購入の確認を望む
- 59%:配送に関する最新情報を受け取りたい
- 45%:配達時に販売者と連絡を取ることを望む
運送業者の追跡ページへのリンクが記載されたEメール送信を送信することで、カスタマー自身で荷物の配送状況を確認することができます。
カスタマーの39%は1日に1回オンラインショッピングで注文した荷物を追跡しているため、トラッキングナンバーの共有は商品を購入したカスタマーにとって重要な情報となっています。
荷物の紛失に関しては、販売者の対応が今後のカスタマーとの関係を左右する可能性があり、 アメリカの消費者の19%は配送に関する問題が発生した場合、そのWebサイトでの買い物をやめるだろうと回答しました。
荷物が紛失した場合、42%がそのような状況で再び買い物をするかどうかは販売事業者の対応次第で決めると回答しました。
こちらは「チェックアウト時に配送保険を選択するオプションがあった場合、追加(課金)しますか?」という調査の回答です。
- 27%:配送保険を追加しない
- 26%:常に配送保険を追加する
- 22%:販売者が負担する場合は配送保険を利用する
- 25%:一定金額以上の購入に限り配送保険を利用する
「カスタマーに配送保険を提供していますか?」という調査の回答は下記のとおりです。
- 50%:配送保険は提供しておらず、今後開始する予定もない
- 21%:全ての注文で配送保険を提供
- 16%:一定金額を超える注文に配送保険を提供
- 13%:現在配送保険は提供していないが開始する予定
輸送中の破損や荷物の紛失はオンラインショッピングで日常的に起こるトラブルのため、配送保険を追加することはカスタマーに安心感を与え、何かが起こった場合に前向きな解決策を提供する優れた方法です。
また消費者の50%は、配送保険の費用は販売者が負担すべきであると回答しており、荷物の保護に対する要望と販売者が費用を負担することへの期待を示しています。
ですがShippoが調査したところEコマース事業者の半数は、現在配送保険を提供しておらず、今後も提供する予定がありません。
カスタマーの要望に応え安心感を提供したい場合、他社とサービスの差別化を目指し配送保険の導入を検討しましょう。
返品に関して
Shippoの調査によると2022年Eコマースでの返品および交換に関して、アメリカの消費者の84%がオンラインで購入する前に返品ポリシーを読み、消費者の91%が返品のしやすさが再度買い物をする意欲に繋がると述べています。
返品無料は消費者にとって印象が良い施策なので、多くのEコマース事業者はカスタマーと良好な関係を維持するために、返品時の送料や手数料を負担しています。ですが返品無料にするには、高いコストが必要となります。
2022年アメリカでは、8,160億ドル相当の商品が返品されました。
送料と同様に購入前に商品ページでより詳細な返品情報を提供するか、返品に関するFAQを作成し、ビジネスのリスクを最小限に抑えるために、あらかじめ返品を予測する必要があります。
アメリカで事業展開をするにあたって、最も重要なことの一つであるカスタマーサポート。その対応を円滑に行うための第一歩として、効果的なFAQページは必要不可欠です。商品やサービスに対する疑問・質問がある時、返品や交換などの方法に対する質問や[…]
こちらは「オンラインで購入した商品を返品する場合、最も重要なのは次のうちどれですか?」という調査結果です。
- 45%:返品無料
- 24%:簡潔な返品
- 18%:迅速な返金
- 9%:返品期間が長い
- 3%;返品に対して特に気にならない
- 1%:返品以外のことが気になる
下記は「返品はどのような方法で行われますか?」という調査の結果となります。
- 51%:カスタマーからの返品依頼があった場合、返品ラベルを作成する
- 29%:返品は一切受け付けない
- 5%:全てに返品ラベルを同梱している
- 3%:実店舗で商品を返品する必要がある
- 12%:その他
生鮮食品や衛生的な商品など返品が難しい一部商品を除き、スムーズに返品できるようにすることで商品購入のハードルを下げることができます。
またAmazon USなど一部のWebサイトでは、カスタマー自身が返品方法を選択できる場合もあります。
日本企業がアメリカで小売業を運営する場合、注意しておきたいことがアメリカの返品文化です。アメリカでは日本に比べはるかに返品が行いやすいようになっており、不良品・欠陥品などのような決定的な理由がなくても気軽に商品を返品することが可能となります[…]
アメリカのECビジネスで取り入れるべき施策
配送ポリシー・オプションの記載
配送ポリシーの詳細と配送オプションを事前に提供することで、より多くのコンバージョンを促進します。
配送および返品ポリシーを明確にし、さまざまなオプションを提供しましょう。アメリカの消費者の好みに合わせたオプションがあることで、消費者が安心して商品を購入することができます。
送料無料
送料無料の基準(50ドル以上購入で送料無料など)設定を行う、または会員限定で送料無料などの施策を奨励します。
送料無料の特典は一律に消費者へ提供するのではなく、特定の基準価格に達した場合や、ロイヤルティ特典としての送料無料を含めることで、複数購入や会員メンバーの獲得にも繋げることが可能となります。
返品方法
シームレスな返品方法を提供しましょう。
たとえ無料返品がコスト的に実現不可能であっても、便利な返品エクスペリエンスを提供することでビジネスを差別化し、アメリカの消費者の期待に応えることでカスタマーの維持が期待できます。
オーダーの追跡
注文の追跡と配送保険を購入者に提供することで 購入前と購入後のどちらに関しても信頼できる状況を作りましょう。
また購入から配送までのあらゆる段階で最新の情報を購入者に提供することで、商品到着まで安心して待って頂けるようにします。
複数の配送業者の利用
さまざまな配送業者やサービスの料金を比較することで、あらゆる注文に対して最もコスト効率の高いオプションを選択することができます。
最適化された配送方法によりコストの効率化を図ることはもちろんのこと、オプションがあることでアメリカの消費者が希望する配送方法、配送業者を選択できカスタマーエクスペリエンスの向上にも影響を与えます。
オンラインアシスタント/Emily.
これまでアメリカの消費者がオンラインショッピングで重視する事についてご紹介しましたが、自社で施策が行えない、人的リソース不足、言語の問題、アメリカの商習慣が分からないなど、運用に対して不安や悩みがある場合、オンラインアシスタントに業務委託すると良いでしょう。
オンラインアシスタント/Emily.では、アメリカ在住の日米バイリンガルが日本企業のアメリカビジネスのサポートを行なっております。
所属しているアシスタントは、アメリカ市場に精通しているのでアメリカの消費者について深く理解しており、相応しい施策の立案から実際に運用するまで多岐にわたるサポートが可能です。
アメリカでビジネスを行う際、人材雇用に関して頭を抱えることがあるでしょう。日本企業がアメリカで現地雇用する場合、仕事に対する姿勢や働き方が日本企業の基準に見合う人材を探すよう、現場やマネジメント層から求められる状況があります。[…]
まとめ
アメリカの配送ソフトウェア会社「Shippo」が調査した、アメリカのEコマースで消費者が期待する配送方法やオプションなどをご紹介しました、
アメリカでの消費者の動向を理解し、自社のECサイトに反映させることで潜在顧客やリピーターの獲得へと繋げましょう。
アメリカ事業の立ち上げやリソース課題などでお困りの方はお気軽にご相談ください。
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