アメリカは国籍や宗教など多様な人々が集まる国であり、文化や価値観の違いが顕著です。そのため、政治的・文化的にデリケートなトピックに関しては、アメリカのビジネスにおいても特に慎重な対応が求められます。
例えば、祝日やイベント、各種のAwareness Month(啓発月間)などは、地域やコミュニティによって大きな意味を持つことがあり、誤ったアプローチはビジネスに悪影響を及ぼす可能性があります。
この記事では、日本企業が米国市場でビジネスを展開するために知っておくべき文化的ニュアンスについてご紹介します。
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理解しておきたい文化的ニュアンスや配慮すべきポイント
アメリカは多様な人種的バックグラウンドを持つ消費者が存在し、さらに州ごとの文化の差や世代ごとの感覚の違いなど、複雑な要素が絡み合っています。アメリカ市場でビジネスを展開する際、文化的なニュアンスや、センシティブな事柄を理解しておくことは、より効果的なマーケティング戦略を立てる上でも重要であり、同時にリスクを回避するためにも欠かせません。
たとえば、世代や宗教、政治的な考え方によって、消費者の反応はさまざまであり、むやみにトレンドに乗ることにはリスクがあります。そのため、特定の祝日やイベントに関連するマーケティングを行う際、自社のブランドやターゲット層に合っているものかどうかを慎重に見極める必要があります。祝日や行事に合わせたマーケティング活動が効果を発揮することもありますが、そうでない場合もあるため、中途半端な関与は避けた方がいいでしょう。
配慮が必要な祝日や啓発月間の具体例
Indigenous Peoples’ Day
アメリカの祝日で注意すべき一例として、Indigenous Peoples’ Dayがあります。もともと10月の第2月曜日は、Columbus Dayとして、クリストファー・コロンブスのアメリカ大陸到達を記念する祝日でした。しかし、近年ではコロンブスの行為やその歴史的影響に対する批判が高まり、2021年、バイデン大統領が、Native Americanの文化や遺産を祝うIndigenous Peoples’ Dayに関する宣言を表明しました。
多くの州や自治体はColumbus DayをIndigenous Peoples’ Dayと改名し、コロンブスの「発見」にまつわる植民地主義へ抗議の声明を出しています。しかし、Indigenous Peoples’ Dayは連邦政府が定めた祝日であるにも関わらず、州によってはあまり浸透していないところもあります。
この流れを受けて、近年、アメリカの小売業者は、この論争の多い祝日から距離を置き、代わりに他の祝日に合わせたセールイベントを企画する傾向にあります。日本企業がアメリカ市場でビジネスを展開する際には、こうした文化的ニュアンスを理解し、敏感な対応を取ることが求められます。
LGBTQ Pride Month
LGBTQは、「Lesbian」「Gay」「Bisexual」「Trans-gender」「Queer/Questioning」の頭文字をとって名付けられており、特定の性的マイノリティを指す総称です。LGBTQ Pride Monthは、LGBTQコミュニティの権利の向上と多様性の尊重を目的とした啓発月間になります。LGBTQの歴史や文化を祝い、毎年6月に実施されますが、保守的な価値観を持つ層からは反対の声もあります。
アメリカのビジネスにおいては、包括性と多様性を重視したブランディングが求められます。LGBTQコミュニティへの共感を示すには、商品やサービスの提供、広告キャンペーンにおいて、レインボーフラッグを用いたデザインを使用したり、LGBTQの人々を尊重する姿勢を示したりすることで、コミュニティとの信頼関係を築くことができます。
同時に、保守的な消費者を疎外しない方法として、企業の基本的な価値観や多様性の重要性を強調しつつ、全ての顧客を尊重する姿勢を示すことが大切です。幅広い顧客層に対する理解と支持を得るには、そのバランス感覚が必要となります。
Lunar New Year
Lunar New Yearは、特にアジア系アメリカ人コミュニティにおいて重要な祝日です。旧正月は、主に中国、韓国、ベトナムなどで盛大に祝われ、新年の到来を祝い、家族と共に過ごす時間とされています。祝い方は地域によって異なりますが、伝統的な食事、紅包(お年玉)、花火やパレードなどが一般的です。
たとえば、Lunar New Yearに関連するマーケティングキャンペーンでは、赤色、金色、福の字、龍、ランタンなど、旧正月に関連したシンボルを取り入れることができます。
誤った捉え方や不適切な表現を避け、文化を尊重する姿勢を示すことで、アジア系アメリカ人コミュニティの消費者との強固な関係を築くことができます。
配慮が必要な祝日や啓発月間におけるマーケティング
配慮が必要な祝日や啓発月間に関連するマーケティングを行う際には、以下の点に注意が必要です。
背景の理解
LGBTQ Pride Month(6月)のほかにも、啓発月間にはBlack History Month (2月)やWomen’s History Month (3月)などがあります。祝日や啓発月間のそれぞれの背景や意味をしっかりとリサーチし、理解することで、適切なメッセージの発信につながります。
文化的なニュアンスを尊重
Lunar New Yearのような特定の人種に関わるイベントを祝い、そのターゲット層に向けたマーケティング戦略を展開することは、ブランドの信頼性を高める良い機会です。そのためには、特定のコミュニティにおける祝い方や文化的なニュアンスをしっかりと尊重する形でキャンペーンを展開するなどの配慮が重要です。
中立的なメッセージも大切
場合によっては、中立的な立場を取ることも重要です。支持と敬意を示しながら、中立の立場を保持することで、異なる意見を持つ顧客や従業員を疎外しないようにします。
会社の方針と広報のバランス
会社の方針と外部向けのメッセージが一致するように、自社のブランドや顧客層に合った祝日や啓発月間を選択するなどのバランス感覚を持つことが大切です。
オンラインアシスタント/Emily.
オンラインアシスタント/Emily.では、アメリカ在住の日米バイリンガルのアシスタントが所属しています。アシスタントたちはアメリカ現地の文化的な背景やトレンドなどを理解しているので、各シーズンのイベント行事や祝日などに合わせたマーケティングキャンペーンの提案やサポートを行なうことが可能です。
アメリカ独特の商習慣や文化的ニュアンスなどの理解が、アメリカでのキャンペーンを成功させるための鍵となるため、アメリカ現地在住のアシスタントへの依頼がおすすめです。
まとめ
アメリカには多様な価値観を持つ消費者が存在し、祝祭日やイベントも多岐にわたります。日本企業がアメリカ市場で成功するためには、アメリカの複雑な社会や文化的背景への配慮、そしてターゲット層の属性を理解することが重要です。そのため、すべてのイベントや祝日に無理に参加する必要はありません。
文化的なニュアンスを十分に理解し、不適切な表現を避けることで、ブランドの信頼性を高めることができます。アメリカの多様な文化を尊重する姿勢を持ち、長期的なビジネス成功につなげていきましょう。
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