アメリカでの事業の立ち上げは、海外展開を望む企業にとって新たな成長機会を切り開く大きなステップと言えます。しかし、未知の税制度や各州独自の規制・難題に直面することも多く、経営者や担当者にとって悩みどころといえるでしょう。
今回はアメリカの事業展開を考えるにあたって、また、立ち上げたビジネスの安定維持を目指すにあたって、押さえておきたい税務、なかでも法人税についての基本ポイントを紹介します。
アメリカにおける法人税とは
海外進出を目指す日本企業にとって非常に魅力的な市場といえるアメリカ。
いざ事業設立を行う準備段階において、事業の内容に沿って、また、税制の側面を考慮し、法人形態、登記する州を選ぶことになります。後々の税の負担を左右すると言う点からも重要です。
形態はC CorporationやLLC(有限責任会社)等複数ありますが、いずれにおいても州の税当局に登記を行う必要があり、州政府の管轄で現地企業と同様に納税義務が生じます。一部例外がありますが連邦政府への納税義務があるため、税務上の手続きを連邦政府に対しても行う必要があります。
法人税(Corporate Income Tax)は連邦、州レベルで課税されます。群や市町村などの自治体が独自の税法(Local tax)を採用している場合もあります。
- 連邦法人税
- 一律の税率で徴収される。2017年の税制改革法案により2018年以降一律21%。
- 州法人税
- 税制、法律が各州によって異なる。課税方式も異なる。(「フランチャイズ税」等、州法人税という名前で徴収していない州もある)

上記の図からもわかるように、州税のパーセンテージが州によって大きく異なることは日本とアメリカの法人税における最も明らかな違いのひとつといえるでしょう。
州独自の考え方、政策により、課税方式や課税率が異なります。
法人税に関連する重要なスケジュール
確定申告
法人税の申告スケジュールは事業の形態によって異なります。州税に関しては各州の税法によって定められています。年次によって変更されることもあるため、IRS(内国歳入庁)に納付期限を確認する必要があります。
連邦法人税は延長申請をすることで6ヶ月の延長が認められています。各州や各ローカル税務当局も同様の延長申請を受け付けています。
米国法人は各企業において会計年度(Fiscal Year)を決めることができます。多くの会社が1月から12月を年度としています(Calendar Yearと同じ)。一般的には、年度が終わってから4ヶ月後の4月15日が確定申告期日です。
予定納税
連邦法人税の納付は一定額を超えると予定納税(税金の前払い)が必要になり、通常は四半期ごとの納付です。
ビジネス形態により異なりますが、カレンダーと同様の会計年度を採用している企業は4月、6月、9月、1月の15日を締め切りとして納税することが一般的です。

罰金などのリスクを避けるために知っておきたいポイント
関連書類の保管について
申告書や付属書類は通常少なくとも申告日から3年間の保管が必要です。税務調査が入った場合に紙媒体やデジタルデータいずれかの形で記録が残っていることが重要でしょう。
ただし、3年と言う期間がIRS(内国歳入庁)のウェブサイトに明記されているものの、法的用件や具体的な状況に応じて例外に該当するケースもありえます。
過小報告をしているとみなされた場合や、申告自体がされていなかった場合が例外にあたり、3年ルールは適用されません。
最悪の場合、無制限の保存期間となる場合もあります。事業主や経営者は少なくとも7年間は申告書や付属書類を保存しておくことをお勧めします。
提出期限に遅れないための事前準備
各税務当局への納付期限の前には会計士への書類の提出が必要になるのが一般的です。会計士が算出作業をする際必要とする書類の保管・整理ができているかがここで大切になります。
英語で税制に関わる書類、申告書を読んで理解しなくてはならない日系企業担当者にとっては、現地の担当者とは比較にならない時間がかかることもあります。
信頼のおける、連携の取りやすい会計事務所、税務の専門家と余裕をもってスケジュール調整を行うことが重要です。
法案改正による税制上の大きな変更はもとより、年単位で申告納付期限等が変更されることがあります。災害等の影響を受けた地域に位置する事業者に対して、申告の延長が認められた例もあります。
新しい規制に伴う調整に対応できる体制を整え、事業の妨げにならない日程を組む必要があるでしょう。
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アメリカの税法と規制は複雑で変化しやすいものです。したがって、このブログに含まれる情報は一般的なガイダンスであり、具体的なケースに関しては会計専門家にご相談下さい。
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まとめ
アメリカにおける税務申告は複雑で、税規制の更新に対応しなければならないため、担当者は税務当局から出る最新情報を把握する必要があります。そこで会計事務所との緊密な連携が必須となります。
本来の事業活動を遂行、発展を図るために、また、煩雑な事務作業や税務対応に費やす時間を最小限に抑えるために、会計アシスタントについても、オンラインアシスタント/Emilyのサポート利用をお勧めします。
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